僕が小学校2年生の頃、ベイブレードが大流行していました。
授業終了のチャイムが鳴ると同時にダッシュで自宅へ帰り、毎日のように友達の家でベイブレード大会を開催していました。
ベイの羽をとった方がよく回るとか、重りを付けると強くなるとか、お互いに情報交換をし、創意工夫をして遊んでいました。
「いくぜ!ゴーシュー!」
ジャッジャッジャッ
「いけぇー!」
ジャッジャッカキンッ!
「あぁぁ…!」
とても強い友達がいて、僕は全然勝てませんでした。
そのうち、冬休みに入りました。
年末やお正月など、家族と過ごす時間が増えるため、友達とは遊べません。
僕はベイブレードで最強になるため、冬休みを使ってトレーニングをしようと考えました。
弟と一緒に簡易スタジアムを作成し、毎日のようにゴーシューしました。
しかし、弟のベイは安価でもはや正規のベイブレードなのかどうか分からない代物だったため、僕が圧勝してしまいます。
「これじゃ修行にならない…」
そう思った僕は工夫を凝らし、ベイゴマとやりあったり屋外で戦ったりしていました。
正月を迎え、新年の挨拶をしに親戚の家へ行きました。
お年玉をもらい、おせち料理を食べ、テレビを見る。いつも通りの普通の正月です。
案の定、飽きてきた僕ら兄弟はベイブレードをしました。
スタジアムは持ってきていないため床で戦おうとしますが、平らな床ではベイがぶつかりあってくれません。
息を吹きかけお互いのベイを接近させて遊んでいましたが、だんだんと疲れてきて、ただ回り続けるベイを眺める作業となっていました。
ベイを眺め続ける僕らのところへ、酔っ払った叔父がやってきました。
「なにしてんだぁ〜?」
「コマを回してんの」
「へぇ〜よくできたコマだなぁ〜」
ここで、僕がとある遊びを思いついてしまいました。
それは
叔父の頭でベイブレードを回す
毛がない部分を使ってどちらが長くベイブレードを回し続けることができるか競うデスゲーム。
これを弟としたいと思いました。
さっそく提案します。
「おじちゃん。頭の上でベイブレード回していい?」
「いいよぉ〜」
いいんかい。
叔父に座ってもらい、立ち上がった僕と弟で挟み込むようにポジションをとります。
あとは回すだけだ!
「よし!一頭目いきま〜す!」
ドクンドクンドクン
ベイブレードを頭で回すとどうなるのだろうか?
そう考えただけでドキドキが止まりません。
叔父の頭上にシューターを持ってきて、引き金に手をかけます。
「ゴォォオオオッ…!!!」
訪れる静寂。
永遠にも感じる2秒間。
・
・
・
―今だ!
思いっきり引き抜け!!!
「シュゥウウウウ「ギャァああああああああああアアアアアアクァwせdrftgy不二子lp;@:「」」
ギュリギュリギュリギュリギュリギュリギュリギュリ
ブチィリリチチィィィリリリリリアチチリイリリリ
ツツツツツツウツツツツボッツ
首をもたげる叔父の頭からまるで命綱を掴んでいるかのように宙に浮く僕のベイブレード。
叔父の叫び声を聞いてキッチンから何事かと驚いた表情で飛んでくる母親。
怒られて涙目になりつつ頭からコマをぶら下げた変な叔父さんに謝る僕。
絡まったベイを取り除くためにハサミで髪を切られる叔父。
何故かシューターを構えやる気満々の弟。
毛が生えたベイを受け取る僕。
餅を焼く叔母。
食う親父。
僕は正月に地獄絵図を描いてしまったようです。
P.S. 頭上でベイブレードを回しても良い方、募集中です。